フォトブック道場 ― 数をこなせ!
Enter the photobook master road - Don't think...read!
フォトブックとは? ― 畢竟文学の一種です。
この卓上で紹介するのは所謂アート系の「フォトブック」です。クジラの写真集、ハワイの写真集、アイドルの写真集、戦争の写真集…タイトルだけで大体の内容が判る「写真集」とは異なる作家の主張がより強い本。前者「写真集」が一般書寄りだとすればこれら「フォトブック」は文芸書寄りだと言えるでしょう。作家の作品に触れるほど馴染んで行く、やがては作家の名前だけ見ても何となく作風が浮かんでくるようになるという点も同じです。
先ずは編集を楽しもう
フォトブックの読み方は文芸書の読み方の反転、普段慣れ親しんでいる文章を読みながら脳内に映像を構成して行くのとは正反対のプロセスで楽しむ世界です。慣れないと一種「酔い」とでもいった感覚さえおぼえて敬遠の元となるでしょう。先ずは読解しよう、という事をしないで、1冊毎に込められた編集意図を冷めた目で楽しんでみるのがお奨めです。1冊のフォトブックが出来るまでに大抵の作家はその何倍何十倍もの写真を撮って焼いた筈です。どうしてこのプリントが選ばれたのか、どうしてこの順番で構成されているのか、ブックデザインまで含めての編集や構成を客観的に分析して自分の評価を決めて行くと意外と読み飛ばしに陥らず、印象に残る本も増えて行きます。映像を文字化してみるのです。
ツッコミながら数をこなそう(実りは豊かだ)
数をこなせば自分なりの評価の基準~それに従った読み方の作法が出来てきます。比較が出来るようになると自然とプリント技術や構図構成について優劣がつけられるようになって行き、記憶化された比較対象の厚みが増してくるほど最初はつまらないとしか思えなかった本にもツッコメるようになって行きます。フォトブックを「見る」から「読める」ようになった段階です。性急に作品世界とか作家世界を理解しようとか前のめりにならないほうがいいです(司書の個人的経験)。今回メジャーなアートフォトブック出版社の本を中心にノンジャンルとにかくどっさりと並べてみました。自分の物差しの確立をめざしましょう。
上野毛図書館のフォトブック・コレクション
上野毛図書館はかつて映像系の学科があった多摩芸術学園と造形表現学部の蔵書を引き継いでいる関係でフォトブックを含んだ写真集の充実が特色となっており、現在も積極的に収集を行っています。上野毛の全蔵書中に占める構成比率は6%超(八王子は2%)で、上野毛でしか所蔵していない物が多いです。今回ギャラリーで開催される展示に合わせて八王子の学生さんに向けて上野毛のフォトブックの紹介を大々的に行うことにしました。是非手に取って見て頂きたい「読める」ようになってもらえると嬉しいです。